第八部 「焔の神」朝になった。相変わらず、日は出ていない。長老に見送られて、一週間は過ぎたか、過ぎていないか位だろう。 ついに、長老からもらった最後の食料もつきてしまい、とぼとぼと重い足取りで、草木も何もない広い砂地を歩いていた。空腹で仕方がない。 長老によると、この先に一人目の神がいる、「セッジ村」があるらしい。長老は、僕たちにこういっていた。「黒い城を潰すには、まず神を集めなければならない。神はある町に、1人ずつ、お前達が現れるのを待っている。お告げによると、この世界をお前達が救うらしいのじゃ。いいか、神が死んでおらんかったら、神の子供を捜すのじゃ。目と耳と鼻を信じるな。心で、見極め、常に神経を研ぎ澄まさなければ、黒い城の兵たちに殺されてしまう。神を集めたのならば、我が家に神を集めこの陣に立たせるのじゃ。陣にはそれぞれ、`気`と、`物質`の陣がある。気では、合気、大気、天気などじゃ。物質では、氷、水、雷、などじゃ。たいていの神は、その能力が使える。後は、お前の心がどれだけ強いか、じゃ。」こう言い、長老は僕たちを送っていった。さっぱりわけがわからないが、何となくわかる気もした。 その日の夕方やっと「セッジ村」に着いた。その時はもうくたくたで、二人で門のところで共倒れした。そこで意識が無くなった。 「あっ、気がついたかい?もう大丈夫だよ。このスープを飲めばね。」 「おう、このスープほんとにうまいな。オレの故郷でこんなうまいスープは飲んだことがねえ。」 ガルバ?そうか、僕と共倒れして、先に気がついたんだ・・・。情けない。 「ここは?」 大丈夫だ。とガルバが言った。 「この少年が救ってくれたんだ。俺たちを運び出してくれたんだぜ。そういえば、あんたみたいな人がどうやって俺たちを運び出してくれたんだ?」 ガルバが小柄な少年を指していった。確かに、なんだかやせ細っている。 「ああ、シーズが運び出してくれたんだ。おーいおいで。」 すると、リスのようなネズミのような動物がちょこちょこと少年の肩に乗った。しかし、こんな動物で僕たちを運び出した?僕でも無理なのにガルバなんて、僕より一つ頭が乗ったぐらいでかい。もちろん重い。 「おいおい、それじゃ何の答えにもなってないぜ。」 ガルバが笑いながら言う。 「そういやあんたの名前を聞いていなかったな。おれもさっき目覚めたばっかだからな。おれは、ガルバでこっちはカルスだ。」 「よろしく」 僕は、警戒しながら言った。こんな少年でも黒い城の兵かもしれないと思ったからだ。実際目で見ると優しそうな少年だが、やっぱりとってもいい人に思えてしまう。でも、心は良いと言っているので警戒を少し緩めた。 「僕は、セロ。さっきも言ったけど、この子がシーズだ。よろしく。とにかく、ガルバさんはもう飲んだけど、カルスさん、あなたも飲んだ方がいいですよ。元気になりますから。」 セロが勧めてくれたが、僕は飲む気になれなかった。 「大丈夫だ。カルス、おれはもう飲んだが毒薬とかそう言うのは一切入っちゃいねえ。せっかく作ってくれたんだ。飲まなきゃ失礼だぜ。」 そう言われて、一口飲んだが、たしかにおいしい。ここ最近何も食べていなかったので、なおさら美味しく感じた。 食事が終わり、不思議な動物のシーズの事をガルバが聞いた。 「俺たちを一体このちっこい動物がどうやって運んだと言うんだ?考えられ,えんだが・・・。」 まだ、頭をかかえている問題だ。するとセロが、立ち上がり話し始めた。 「簡単な事さ。シーズにとってはね。シーズは特別な才能があるんだ。さあシーズお見せ。」 軽く口笛を吹いたかと思うと、突然リスのような身体が巨大化し始めた。あっという間に、十五秒ぐらいで巨大化が終わり、ガルバよりでかくなった。 「こいつぁ・・・。」 ガルバも腰を抜かしている。ふるえているようだ。でも僕は、危険性は感じなかった。巨大化してもまだカワイイ動物にしか見えない。 「巨大化したから、力ももちろん強くなってるよ。だからさっきも君たちを運び出したんだよ。他にもね、シーズには才能があってね。」 「なんだよ、まだあるのかよ・・・・。」 とガルバは後ずさりしていたが、僕は見たくて仕方がなかった。するとセロが話し始めた。 「一つ、巨大化。でも他にも人間とも言葉がわかるんだ。心の許す相手であればだけど、心で話せる。動物や木にも話せる。つまり、情報がすごく良く手にはいるんだよ。そして最後。これは驚くよ。なんとね、シーズは焔を吐くことが出来るんだ。」 一瞬、沈黙が続いた。そして、その沈黙をガルバが笑いながら切り出した。 「はっはっは。そんなわけねえだろう。だって、この動物が焔を・・・・。あっはっは・・・・。」 笑いが止まった。突然、シーズがくしゃみをしたからだ。焔の。 「うわあああああ。・・・・、今のは・・・・・。」 「だから言っただろう?焔を吐けるんだよ。でもシーズはこの才能のせいで自分の家族たちに捨てられたんだ。かわいそうに・・・。」 しかし、僕の耳にはそんな言葉が聞こえてこなかった。ついに見付けた!!一人目の神を・・・。 「ごめん。こんな夜に。」 セロが来た。 「どうしたの?なに?話って。」 「じつは、君のことなんだ。」 相手はビックリしたらしい。突然口調が早くなった。 「僕!?敵じゃないよ。絶対に君を裏切ったりしないし、これからも考えようと思っているんだ。」 「いや、はっきり言ってしまえば、シーズなんだ。」 「シーズ?シーズがどうかした?気に入らなかった?」 「いや、気に入ったさ。僕は、ある使命を背負っているんだ。とても重大な使命をさ。できれば君にも教えたい。でも君には危険な目に遭ってほしくないんだ。だからあえて言わない。そして、シーズ。シーズはこの僕の使命には欠かせないんだ。絶対に。シーズがいないと、僕の使命は終わる。とても大事な使命が。だから、シーズを僕に渡してくれないかな?」 話し終わると、ため息が出た。セロは驚いていた。 「そんな、シーズを・・・。いやだ、1人はいやなんだ。」 「お願いだ。本当に・・。」言いかけたが、 「だめだ!」とぴしゃりと言われてしまった。 そこへ、なんとシーズがとことこ歩いてきた。 「シーズ・・・。」 セロが言うと、突然心に何者かの声が響いた。 (「シーズさん、僕は行かなければ行けないんです。どうしてもなんです。きっとこの使命を果たせないと、あなたはもっと辛い思いをしてしまう。だから僕を、カリスさんと行かせてください。」) 不思議な感じだった。セロを見ると、泣いていた。 「シーズが言うなら仕方ないか・・・・。使命が終わったら戻ってきてよね。絶対・・・・。」 そう言うと、部屋に閉じこもってしまった。これで良かったのかなと、心の中で思っていると突然、また心にシーズが語りかけてきた。 (「良かったんですよ。これで。使命はわかっています。神のお告げを私も聞きましたから。そのためもあって、家族は私を捨てたのだと思います。それにセロさんにも、またもう一度会える気がするんです。」) 「うん。僕もきっとそう思う。」 次の日の朝、僕らは出発した。セロからもらったたくさんの食料と、新しい仲間、シーズを連れて。 いや、一人目の神、`物質`の陣`焔`の神を連れて・・・。 新しき神の接続書クリックして次の物語へ・・・。 |